『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』L’Incroyable histoire du Facteur Cheval

フランス映画祭で観逃がしてしまったニルス・タヴェルニエ監督の『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』L’Incroyable histoire du Facteur Cheval 。

好評だったのでいち早く観たくって、先週の公開初日に行ってきました。

あらすじ

Fin XIXème, Joseph Ferdinand Cheval, est un simple facteur qui parcourt chaque jour la Drôme, de village en village. Solitaire, il est bouleversé quand il rencontre la femme de sa vie, Philomène. De leur union naît Alice. Pour cette enfant qu’il aime plus que tout, Cheval se jette alors dans un pari fou : lui construire de ses propres mains, un incroyable palais. Jamais épargné par les épreuves de la vie, cet homme ordinaire n’abandonnera pas et consacrera 33 ans à bâtir une œuvre extraordinaire : “Le Palais idéal”.

http://www.allocine.fr/film/fichefilm_gen_cfilm=261959.html

19世紀末。ジョゼフ・フェルディナンド・シュヴァルは毎日ドローム県を村から村、町から町へと歩いて回る郵便配達員だ。前妻を亡くし、子どもを奪われ、孤独だった彼はフィロメーヌと出会うことで人生が一変した。二人は愛娘アリスを授かった。シュヴァルはアリスのためにたったひとりで、宮殿を手作りするという大きな賭けに出た。
過酷な運命が彼を待ち受けるが、決してあきらめることなく、33年の時をかけて唯一無二の「理想宮」を作り上げた。

変わったお城を一人で建てた郵便配達員の“ほんわかした”作品なんだろうと思っていたのだけれども、シュヴァルの過酷過ぎる運命に号泣の連続でした。
会場のいたるところからもすすり泣く声が。

喜怒哀楽をださない18世紀版“笑わない男”シュヴァルが、全身で感情を露にするシーンは今思い出すだけでもウルっとしてしまうほど。
こんなにも感情を揺さぶられる作品は久しぶりに観た気がします。
次回観るときは絶対大判ハンカチを忘れないようにしないと。

配達物のなかの絵葉書をみて、想像を巡らし作り上げた「理想宮」。
ネットもテレビも電話もない時代。Google Map上で地球の裏側の世界遺産に秒で辿り着けるいまと違って、圧倒的に情報量が少ない時代。

物語は「男は外で働き、女は育児」という典型的ステレオタイプ観念が蔓延る時代背景ですが、情報が溢れかえっている現代よりはずっとずっと、想像を膨らますのが容易かったはず。

建築学の知識もない、美術も知らない、元パン屋の郵便配達員。そんなシュヴァルが娘・アリスのために、絵葉書や本の活字から得た僅かな情報をもとに想像だけで作り上げたお城。
実際の宮殿で撮影が行われたそうで、もう絶対次の旅計画に組みこもうと決めました。

このシュヴァルの理想宮は、リヨンの南東、オートゥリーヴという街にあります。

http://www.facteurcheval.com/visite/venir-a-hauterives.html

ただでさえアクセスしづらいのですが、ストライキの今はもっと大変だろうなあ…

レティシア・カスタはいま渋谷Bunkamuraで公開中の『パリの恋人たち』（L’Homme Fidèle）にも出演中（それにしても邦題が解せない…）。
（『L’Homme Fidèle』の感想はこちら➡『ある誠実な男』（L’Homme Fidèle）)

彼女の勝手なイメージとしては『歓楽通り』のマリオンとか、『ゲンスブールと女たち』のB.Bとか、妖艶で数々の男を魅了する…という感じだったので最初ピンとこなかったのに、もうこの役は彼女しかいないというくらいのハマり役。入浴シーンの絵画のような美しさを見て、私も恋に落ちました。。
（「しゃべらないけど行動はするのよ」とかいうセリフ回りも好き。）

そして赤ちゃんに被せるレースの帽子から、ウェディングドレスまで、衣装がとても美しかった…。

---

予告編も少しネタバレがあるので、何も観ないのをおすすめします…！